滑舌を改善する方法
滑舌とは
何となくは知っていても、いざ説明するとなるとやりにくい……そんな滑舌という言葉。
そこで、まずは発音とは、滑舌とは、という定義から解説していきます。
発音とは、言語を音声で発することを指します。
例えばですが、中学校の英語の授業などで発音を習うとき、「『R』は舌を巻くように発音する」「『V』は軽く下唇を噛(か)むように」など、口の形や、舌の位置を先生に教えられたことはありませんか?
英語同様、日本語(五十音)ももちろん、こういった発音の際の口の形や舌の位置が決まっているのです。
一方の滑舌とは、もともとはアナウンサーや俳優など、声を使う職業の業界用語で、口の動きを滑らかにするために行う、発音の練習のことを指します。
そこから、「発音や発声がはっきりとしていて、滑らかな話し方」という意味に転じ、今では「滑舌が良い/悪い」といった、発音や発声に対しての評価として使われるようになりました。
定義の説明が終わったところで、いよいよ本格的な解説です。
発音の良し悪しは、「口の形と舌の位置」で決まります。
口の形も舌の位置も、母音5つを発音するだけで、目まぐるしく変わります。
子音はさらに細かく分類されており、舌の位置だけではなく、歯や口蓋(こうがい)(口の上側の部分)についての動きも決められています。
われわれはしゃべる時に何気なくやっていることですが、口の中では複雑なことが繰り広げられているのです。
もし「自分は、サ行が苦手だ」「英語の発音がうまくいかない」と悩んでいる方は、口の中の形や、どこで発音をしているのかを分析して、滑舌練習をすると効果が上がるかもしれません。
滑舌が悪化する5つの要素とは
ここまでの話で分かる通り、良い滑舌には正しい発音が欠かせません。
しかし、一音一音が正しければ万事解決……というわけでもありません。面接で自己PRをするときなどは、文章、つまり言葉を1つのフレーズとして話す必要がありますよね。
ここでは発音での問題以外に、滑舌が悪くなる理由を探っていきます。基本的には以下の5つに大別でき、それぞれに対策があります。
1.口を大きく開きすぎている、または小さい
一般的に、発音をよくするためには口を大きく開けるのがよいとされていますが、「大きく」がどの程度か分かりにくいため、めいっぱい開けてしまう方もいます。
実際にやってみると「めっちゃしゃべりづらい……」と感じるはず。口が開きすぎると、あごに余計な力が入り、口の中を滑らかに動かせなくなります。
とはいえ、逆に口の開き具合が小さすぎても、口の中の形が変わりづらく、発音が不明瞭になるので良い滑舌とは言えません。声量も出にくいです。
結局「適切な口の大きさってどれくらい?」という話になるのですが、これは人によってさまざまであり、一概にこれが良いとは言えません。ご自身でいろいろと探っていただくのが一番いいかなと考えています。
2. 姿勢が悪い
姿勢と腹式呼吸にも関連しますが、滑舌を良くする上でもこれらはとても大切です。
姿勢が悪い、例えばうつむいたまま口を開けようとしても、開きにくいはず。他にも首や肩に力が入っていると、舌にも力が入ってしまい滑らかに話せません。体の力を抜き、自然体の良い姿勢で話すのが良いでしょう。
3. 普段、口呼吸をしている
人の呼吸には「鼻呼吸」と「口呼吸」の2種類があります。
口呼吸とは、その名の通り、口から息を吸う呼吸ですが、口を常に開けているため、舌が緩んでしまうといわれています。そのため、舌の筋肉が衰えてしまい、思うようにコントロールできず滑舌が悪くなります。
滑舌以外にも、口呼吸は常に口が開くので口の中が乾きやすいため、唾液の量が減って虫歯になりやすかったり、口臭の原因になったりすることもあります。
呼吸法なんて意識したことがなかった! という方は、この機会にぜひ鼻呼吸をするよう意識してみてください。
4.舌の筋肉が緩んでいる
口呼吸の部分でも触れた通り、舌の筋肉が衰えると滑舌は悪くなります。筋肉が衰えているかどうか、簡単に調べる方法があるのでご紹介します。
「自然に口を閉じたとき、あなたの舌の位置はどのあたりにありますか?」
下の歯の裏にくっついている、上の歯と下の歯の間にある……そんな方は「低位舌(ていいぜつ)」の可能性があります。口を閉じたとき、上あごの前歯の少し後ろ(スポットと呼ばれるポコッとしたふくらみ部分)に舌がくっついているのが理想的な状態です。
舌はほぼ筋肉でできており、200g程度の重さがあるといわれています。筋肉が衰えると重さに耐えきれず、喉の奥に舌が垂れ下がった状態になります。これが低位舌です。
低位舌は、滑舌が悪くなるだけではなく、睡眠時無呼吸症候群や誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を引き起こす可能性もあるため、鼻呼吸を心がけ、以下のような舌のトレーニングで筋肉を鍛えることをおすすめします。
5. 早口になっている
緊張や呼吸の浅さから、早口になってしまっていると、滑舌は悪くなりがちです。
上述の通り、発音は1つ1つ口の形や舌の位置が変化します。早くしゃべろうとすると、次から次へと口の形は急いで変化を繰り返します。そうすると、早さに口がついていかず、コントロールを失って言葉を噛んだり、正しい位置で発音ができなくなってしまったりすることがあります。
また、滑舌とは少し違いますが、誰かと会話をする際、相手は耳で聞いた言葉を頭の中で情報処理をして意味を理解します。そのため、しゃべるスピードが早すぎると、情報処理が追いつかず、結果、相手に伝わりづらくなってしまいます。
緊張で早口になる方は、いつもよりゆっくり話すように心がけてみてください。呼吸が浅い方は、一度深く深呼吸をすることでリラックスするとともに、ぜひ腹式呼吸での発声を思い出してください。
聞いてもらうことも重要
滑舌を良くする練習というと、いわゆる早口言葉や「外郎売(ういろううり)」をとにかくたくさんやろう! となりがちですが、そもそもの正しい発音を知らず、舌の筋肉トレーニングをしていなければ、それほど効果が上がらない可能性が高いです。まずはそこから見直してみてください。
正しい発音ができているかどうかは、自分では気付けない場合も少なくありません。
録音をして自分で聞いてみることはもちろんですが、ご家族やお友達など、周りの方にも聞いてもらって、気になった発音を指摘してもらうこともいい方法かもしれません。
ちなみに、先ほど紹介した舌の筋肉トレーニングは、小顔効果やアンチエイジングも期待できます。毎日続けて、いい声とともにシュッとした顔も手に入れちゃいましょう。
私たちは日常で何気なく会話をしたり、声を発したりしていますが、実は口や舌の筋肉は相当頑張っています。ぜひ気にかけてあげてくださいね。
-
前の記事
裏声の練習方法
-
次の記事
ボイトレスクールに通うきっかけ